【作業環境測定】2日間測定による評価について
作業環境測定を実施されている事業所で、測定値が管理濃度の半分以下なのに第2管理区分と評価されている、という担当者の方はいらっしゃいませんでしょうか。
ほとんどの事業所において1日測定で作業環境測定を行っていますが、同じ作業場を2日間測定するといった選択肢もあります。
そこで今回は、2日間測定とは何か?どのような考え方かご紹介したいと思います。
作業環境測定の評価方法について
作業環境測定の評価は「作業環境評価基準 (S63.労働省告示第79号)」で行います。
作業環境測定には、作業場内全体の有害物濃度を測定する「A測定」と、作業者へのばく露が最大となることが考えられる位置での「B測定」があります。
2日間測定では、A測定の評価が1日測定とは異なります。
A測定の評価について
A測定評価に用いる第1評価値は「高濃度側から5%に相当する濃度の推定値」とされ、この値が「管理濃度」を超えるとその作業場は「第2管理区分」と評価されます。
評価値の計算方法は以下の式になります。
1日測定の場合
2日測定の場合
M1は1日目の、M2は2日目の幾何平均値、同様にσ1、σ2はそれぞれの幾何標準偏差になります。
これだけではわかりにくいので実際の数字で説明します。
例えば管理濃度10ppmの物質をA測定5点計って1点だけ10ppm、あとの4点は5ppmだったとします。
この場合M1は5.743ppm、σ1は1.363、第1評価値は19.26で第2管理区分となってしまいます。
もし仮に2日測定で2日目もまったく同じ測定値だったと仮定すると、この場合第1評価値は9.56となって第1管理区分に収まります。
実際の評価図
次に、当社の報告書に添付している評価図をみてください。
1日測定 | 2日測定 |
先ほど説明した式から導かれる評価図は、1日測定と2日測定で上のように異なります。
Mとσが1日目と2日目で全く同じならば、青い丸の作業場は第3管理区分から第2管理区分に、赤い丸の作業場は第2管理区分から第1管理区分に変わります。
これはどういうことかというと「1日測定」の場合、測定日によっては「もっと悪い状態の日があるかもしれない」という考えでより安全係数を含んだ評価を行っているためです。
もちろん、このように厳しい評価を行ってもなお「第1管理区分=良好な作業環境」という結果になるのが望ましいですが、日々定常的な作業が行われていたり、日々の有害物使用量が一定している事業所の場合は、今見ていただいたように厳しすぎる評価方法と考えられます。
もともと作業環境測定は「連続する2作業日に同じ測定を繰り返して行うことが望ましい」(デザイン・サンプリングの実務・日本作業環境測定協会)とされています。
このように現在の評価方法は、かなり安全側の評価を行っているために、わずかな差で第2、第3管理区分になっている作業場の場合には2日測定をお薦めします。
最後に
今回のブログでは、2日間測定とは何か?どのような考え方かご紹介しました。
2日間測定は、作業環境測定の測定値のわりに評価がきびしいとお感じの事業者の方にお薦めしております。
ご相談などありましたら、お気軽にお問い合わせください。