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2020.11.16(月)

【コラム記事】富士山の環境問題とその対策について

富士山の環境問題とその対策について

日本一の山「富士山」がユネスコの世界遺産に登録されて7年が経ちました。

富士山が自然遺産ではなく文化遺産として登録されているのはご存知でしょうか?

富士山は「山」なので自然遺産として登録されているものと思っていましたが、実際は文化遺産として登録されています。

なぜかと調べていると、富士山ならではの問題があることが浮かび上がっていきました。

富士山ならではの問題とは?

まず、日本が世界遺産条約に加盟してすぐ、民間を中心に富士山の世界自然遺産への登録を目指した動きがスタートしました。

しかし、観光のための開発が進みすぎていることや、登山者のし尿処理の不備やごみ投棄問題などといった環境保全の状況が障害になり、推薦候補からは外れてしまいました。

そこで、世界自然遺産への登録を断念し、富士山は日本最高峰として古くから信仰対象であり、浮世絵など多くの芸術に影響を与えてきた存在であることから、富士山の文化的意義に着目し、世界文化遺産としての登録を目指すことにした、という経緯がありました。

こういった経緯から、「富士山が世界自然遺産になれないのはごみのせい」という言葉が世間に広まったそうです。

なぜ富士山にはごみが多いのか?

富士山周辺は年間3000万人の観光客を集め、5合目を訪れる人も年間300万人以上だそうです。

更に、年間30万人が登山する(山開きしている時期は約2.5ヶ月のため、1日平均約4000人、土日は1日で1万人以上の人が登山のために訪れるそうです)大変人気の高い山でもあります。

排出されるごみとし尿の量がものすごい量になってしまうのは、容易に想像できます。

世界遺産への登録の活動が始まった当時は、登山客のごみに対する意識は低く、ポイ捨てが横行し(ハードな登山道ですので少しでも荷物を減らしたいという意識が強くなってしまうのでしょう)、山小屋のトイレは「地下浸透型」、言い換えれば「垂れ流し」が当たり前で、「白い川」というトイレットペーパーが流れて乾いて固まった状態がまるで川のように残っており、悪臭を放っているような状態だったそうです。

富士山は平地と違って非常に厳しい気候・環境ですので、自然に分解できる量ではなかったのですね。

その後登山客によるごみについては、ボランティアによる清掃活動や関係各所の呼びかけが功を奏してごみ袋を携帯して持ち帰るというマナーが徹底してきたため、ごみをみかけることはほとんどなくなってきたそうですが、問題はし尿の処理です。

何せ富士山は水もなければ電気もありません。

汲み取り式にしてそのまますべて麓に下ろすという考えもあります。

富士山には登山客が利用する4つの登山道のほかに、山小屋へ物資を運ぶトレーラー専用の道があり、バキューム車による回収も可能ではありますが、ランニングコストが非常に高くなってしまいます。

そこで、山梨県と静岡県は、環境省の補助金等により、2006年度までにほぼすべての山小屋で環境配慮型トイレの整備が完了しました。

環境配慮型トイレとは

土壌への垂れ流しを行わないで、し尿をオガクズやカキ殻などを利用し、低温でも活動できる微生物の力で分解したり、燃焼を行ったりして、処理する方式のトイレのことです。

また環境省でも山頂など計3か所に公衆トイレを設置し、山小屋のトイレを含むと、現在富士山5合目以上には環境配慮型トイレが50か所ほど整備されました。

このように、関係各所の努力によって富士山は、2013年に世界文化遺産として登録されました。

最後に

いかがだったでしょうか?

今回のブログでは富士山の環境問題とその対策についてご紹介しました。

登録をめざした動きがスタートしてから約20年もかかってしまいましたが、ゴールは登録ではなくこの状況を維持することです。

世界に富士山の文化をアピールしていくためにも、さらに一層の努力が必要ですね。

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