【分析機器解説】選択的高感度検出器(炎光光度検出器・熱イオン化検出器)について
当社では、作業環境測定や、大気中に排出されている物質の測定、悪臭測定などでガスクロマトグラフという機器を利用しています。
※ガスクロマトグラフについてはこちらのブログを参考にしてください
ガスクロマトグラフで使用される検出器は、汎用検出器と選択的高感度検出器の2種類に分けられます。
汎用検出器は、例外はあるもののほとんどすべての有機化合物や多くの無機ガスを検出できる機器で、もう一方の選択的高感度検出器は、特定のものを感度良く、つまり目的物質以外のものに邪魔されず目的物質をかなり低い濃度まで検出できるというものです。
そこで今回は、ガスクロマトグラフで使用される選択的高感度検出器についてご紹介したいと思います
選択的高感度検出器の種類について
選択的高感度検出器の代表的なものは
- 炎光光度検出器(FPD : Flame Photometric Detector)
- 熱イオン化検出器(FTD : Flame Thermionic Detector, TID : Thermionic Detector)
- 電子捕獲検出器(ECD : Electron Capture Detector)
- 質量分析計(MS : Mass Spectrometer)
などがあります。
今回は、炎光光度検出器と熱イオン化検出器についてご説明します。
炎光光度検出器(FPD)
リン化合物、硫黄化合物、スズ化合物のみに対して感度良く検出できる機器です。
FPDもFIDと同じようにサンプルを水素炎で燃焼しますが、FIDとは異なり水素を過剰に供給した炎(還元炎)が使われ、FIDより低温となっています。
リン、硫黄、スズ化合物は還元炎で燃焼するとそれぞれ固有の波長をもつ光を発生するので、その波長の光のみを得るためフィルターを通し、透過した光の強さを光電子増倍管で電気信号に変えて検出します。
当社では、排水や土壌中の有機リン(メチルジメトン、メチルパラチオン、パラチオン、EPN)の検出、空気中や排水中の悪臭系硫黄化合物(硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチル)の検出に使用しています。
熱イオン化検出器(FTD,TID)
有機窒素化合物とリン化合物の検出に用いられ、窒素リン検出器(NPD:Nitrogen Phosphorus Detector)とも呼ばれています。
窒素(N)やリン(P)を持っていない物質でも、N、Pを付ける(誘導化)ことでFTDを利用して検出することもできます。
ただし、リン化合物に対してはFPDの方が感度がよいとされています。
構造的にはFIDに似ており、FIDと同様、水素炎で有機化合物を燃やしますが、FTDでは水素炎の中にアルカリソースと呼ばれるルビジウム(Rb)などのアルカリ金属(陽イオンになりやすく反応しやすいもの)が置かれており、それにより窒素やリンのイオン化が促進されて電流値が上がるという仕組みです。当社では、作業環境測定でのアクリルアミド分析、特定悪臭物質であるアルデヒド類の分析で使用しています。
最後に
今回のブログでは、選択的高感度検出器である炎光光度検出器と熱イオン化検出器についてご紹介しました。
当社では、水中の揮発性有機化合物、クロロエチレン、トリハロメタン、農薬類、ハロ酢酸などの分析に使用しています。
ご相談などありましたら、お気軽にお問い合わせください。